子どもの食べる意欲を育むには 食育の視点と家庭での工夫
子どもがなかなか積極的に食べようとしません。食育では、どうすれば食べる意欲を引き出せるのでしょうか
子どもの「食べる意欲」を育むことは、食育において非常に大切な要素です。これは単に量を多く食べるということではなく、食べ物や食事に対して前向きな気持ちを持ち、様々な食品に興味を持ち、自分で食べようとする力などを含みます。食べる意欲が高い子どもは、新しい味や食感に挑戦しやすくなり、多様な食品を経験することで、偏食の改善や将来的な健康維持にもつながると考えられています。
なぜ食べる意欲が大切なのでしょうか
食べることは、生命維持の基本であると同時に、五感を使い、新しいことを経験する機会でもあります。意欲を持って食べる経験を重ねることは、子どもの探求心や自己肯定感を育むことにも繋がります。例えば、初めての食材に挑戦して「おいしい」と感じたり、自分でスプーンを使って上手に食べられたりすることは、子どもにとって自信に繋がる貴重な成功体験となります。また、食卓を囲む楽しい雰囲気の中で食べること自体が、心を満たし、食べる行為へのポジティブな感情を育みます。
家庭でできる具体的な工夫(どうする)
子どもの食べる意欲を引き出すために、家庭で実践できるいくつかの具体的な方法があります。共働きで時間がない中でも取り入れやすい工夫も多いです。
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食べる環境を整える
- 食事に集中できる静かな環境を心がけましょう。食事中にテレビをつけっぱなしにする、スマートフォンを見せるなどは避けることが望ましいです。
- 子どもの身体に合った高さの椅子やテーブルを用意し、足がしっかりとつくように踏み台を置くなど、安定した姿勢で食べられるようにしましょう。
- 食器は子どもの手に馴染むものを選び、自分で食べやすいように工夫します。
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食へのポジティブな働きかけ
- 食べ物を無理強いしたり、「食べなさい」と強く命令したりすることは避けましょう。これは食べることを嫌いになる原因となる可能性があります。
- 「これはどんな色かな」「シャキシャキするね」など、食べ物の見た目、色、香り、音、食感について話しかけ、五感を刺激する関わり方をします。
- 新しい食材を出すときは、「一口だけ試してみようか」「どんな味がするかな」など、子どものペースを尊重し、挑戦を促す声かけをします。
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自分で食べる機会を作る
- 手づかみ食べをしたがるときは、安全に配慮しつつ自由にさせてみましょう。食べ物の感触を知る大切な経験です。
- スプーンやフォークを使いたがるときは、見守りながら使わせてみます。少々こぼしたり時間がかかったりしても、自分で食べる経験を重ねることが意欲に繋がります。
- 食事の準備や片付けなど、簡単なことから子どもと一緒にやってみるのも良い方法です。例えば、野菜を洗う、レタスをちぎる、食器を運ぶなど、役割を与えることで食事への関心が高まります。共働きで忙しい場合でも、週末に短い時間だけ一緒に何かをする、という形でも効果があります。
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食卓の雰囲気作り
- 家族みんなで「おいしいね」と声をかけ合ったり、食事中に楽しい会話をしたりするなど、明るく和やかな雰囲気で食事をすることが大切です。食事が楽しい時間であると感じることで、食べる意欲も自然と育まれます。
- 食事が終わったら、「きれいに食べられたね」「〇〇を食べてえらかったね」など、できたことや頑張った過程を具体的に褒めることも有効です。食べきれなかった場合でも、「ここまで食べられたね」と肯定的な言葉をかけるよう心がけましょう。
これらの工夫は、すぐに劇的な効果が見られるわけではありませんが、日々の積み重ねが子どもの食べる意欲を育む土台となります。焦らず、子どものペースに合わせて、食事の時間を大切にすることが重要です。