子どもの偏食 食育ではどう考えどう対応しますか
子どもの偏食、なぜ起こるのですか
偏食とは、特定の食材や料理を極端に避ける、あるいは数少ない特定の食品しか食べない状態を指します。これは多くの保護者様が直面する悩みの一つです。
なぜ子どもに偏食が見られるのか、食育の視点からいくつかの理由が考えられます。
まず、子どもの味覚は大人よりも敏感であるため、食材本来の苦味や酸味を強く感じやすいことが挙げられます。特に野菜に含まれる成分に対して、防衛本能的に拒否反応を示すことがあります。これは、かつて人間が毒のある植物などを避けるために備わった本能の名残とも言われています。
次に、「ネオフォビア(新しいもの恐怖症)」と呼ばれる心理的な要因があります。子どもは見慣れないものや食べたことのないものに対して、警戒心を持つ傾向があります。これは食に限らず見られる発達段階の一つの側面です。新しい食材や料理が食卓に登場した際に、一口も食べようとしないのはこの警戒心から来ている可能性があります。
また、過去の経験も影響します。以前に食べた時に嫌な経験(無理強いされた、体調が悪くなったなど)があったり、特定の食材に対して否定的な情報(「これはまずいよ」など)を聞いたりしたことがあると、それを避け続けることがあります。
その他にも、体質やその日の体調、食事の雰囲気、家族の食習慣なども子どもの偏食に関係することが考えられます。偏食は病気ではなく、子どもの成長過程で起こりやすい行動の一つとして理解することが大切です。
偏食は食育上、どのような影響がありますか
子どもの偏食が続く場合、食育の観点からはいくつかの懸念点があります。
最も大きな懸念は、栄養バランスの偏りです。特定の食品群(例: 野菜、魚、肉など)を避けることで、成長に必要なビタミンやミネラル、タンパク質などの栄養素が不足する可能性があります。これが長期化すると、子どもの健やかな成長に影響を与えることも考えられます。
また、食経験が狭まることも影響の一つです。様々な食材や調理法に触れる機会が減ることで、多様な味覚を育む機会が失われます。食経験は味覚だけでなく、食材がどこから来て、どのように調理されるのかといった食への関心を深める上でも重要です。偏食があると、そうした学びの機会も制限されがちです。
さらに、家族全体の食事に対するストレスが増えることもあります。子どものために別メニューを用意したり、食事中に子どもと葛藤したりすることで、食卓が楽しい雰囲気ではなくなり、家族のコミュニケーションにも影響が出ることがあります。食卓は食を共にする場であると同時に、家族の絆を育む場でもあります。偏食が原因でその場がストレスの源となることは、食育の本来の目的から離れてしまいます。
しかし、子どもがある程度の成長曲線を描いており、極端に体調を崩すことがないのであれば、過度に心配しすぎる必要はありません。他の食品で不足しがちな栄養素を補う工夫をしたり、食卓の雰囲気作りを大切にしたりすることも食育の一環です。
偏食を改善するために、家庭では具体的にどうすれば良いですか
子どもの偏食に対して、家庭でできる食育の具体的な対応策はいくつかあります。重要なのは、時間をかけて根気強く取り組む姿勢です。
まず、食べなさいと無理強いすることは避けてください。これは子どもに強いストレスを与え、かえってその食材や食事自体を嫌いになる原因となります。食事は楽しい時間であるべきです。
次に、苦手な食材も食卓に出し続けることです。すぐに食べることはなくても、繰り返し目にしたり、家族が美味しそうに食べている姿を見たりすることで、少しずつ警戒心が薄れていくことがあります。最初は一口サイズや、他の食材と混ぜるなど、抵抗が少ない形で試してみるのも良い方法です。調理法を変える(例: 生野菜が苦手なら加熱する、硬いものが苦手なら柔らかく煮るなど)ことも有効です。
食事の準備や片付けに子どもを参加させることも食育につながります。野菜を洗う、ちぎる、テーブルを拭くといった簡単な手伝いをしてもらうことで、食に対する関心が高まり、自分が関わったものなら食べてみようという気持ちになることがあります。食材がどのようにして食事になるのかを知ることも、食への理解を深めます。
家庭菜園で野菜を育てたり、一緒に買い物に行って食材を選んだりする経験も、食べ物への興味を引き出し、偏食の改善に繋がることがあります。「自分で育てたから食べてみよう」「自分で選んだから」という動機は、子どもにとって強い動機付けになります。
特定の食材を避けがちな場合は、他の食材で栄養を補う工夫も大切です。例えば、野菜が苦手でも海藻類や果物、きのこ類などからビタミンやミネラルを補ったり、肉が苦手なら魚や豆製品でタンパク質を補ったりするなど、食事全体でのバランスを考えるようにします。
そして、子どもが少しでも新しい食材に挑戦したり、苦手なものに触れたりした際には、結果に関わらずその行動自体を褒めるようにしてください。肯定的な経験を積み重ねることで、次の挑戦への意欲につながります。
もし、偏食があまりにひどく、成長に明らかな影響が出ている、特定の食品群を一切受け付けない、あるいは食事の時間が常に激しい親子ゲンカになってしまうといった場合は、小児科医や栄養士などの専門家に相談することも検討してください。専門家からのアドバイスは、家庭だけで悩むよりも解決への糸口を見つけやすくなります。