『いただきます』『ごちそうさま』の意味を子どもにどう伝え教えますか 食育の視点
食育を進める上で、日々の食事の挨拶である「いただきます」と「ごちそうさまでした」は非常に重要な役割を果たします。これらの言葉を子どもにどのように教え、その意味を伝えるかについて、食育の視点からご説明します。
食育における『いただきます』『ごちそうさま』の役割や意味は何ですか
「いただきます」と「ごちそうさまでした」は、単なる食事のマナーとしてだけでなく、食育において深い意味を持つ言葉です。
まず、「いただきます」という言葉には、食事としていただく動植物の命、そしてその食べ物が食卓に届くまでの多くの人々の労力(生産、加工、流通、調理など)に対する感謝の気持ちが込められています。この挨拶を通じて、子どもは食べ物が「命」であること、そして当たり前のように食事ができることへの感謝の心を学ぶ機会を得ます。
次に、「ごちそうさまでした」は、提供された食事への感謝とともに、食事を終えたことへの区切りを示す言葉です。「馳走(ちそう)」とは、準備のために走り回る様子を表し、お客様をもてなすために奔走したことへの感謝の念が込められています。食事を作ってくれた人、片付けをしてくれる人などへの感謝の気持ちを伝える大切な機会となります。
これらの挨拶を習慣とすることで、子どもは食事を単なる空腹を満たす行為としてではなく、多くの恵みや支えの上に成り立っているものとして捉えるようになります。これは、食に対する畏敬の念や感謝の心を育む上で、食育の基礎となる考え方です。
子どもに『いただきます』『ごちそうさま』の意味を具体的にどう伝え、どのように教えれば良いですか
共働きで時間がない中でも、日々の暮らしの中で自然にこれらの意味を伝える方法があります。
1. 保護者自身が実践する
子どもは親の行動をよく見て真似をします。まずは保護者の方が、食事の前に「いただきます」、食後に「ごちそうさまでした」と、心を込めて挨拶をする姿を見せることが最も基本です。忙しい時でも、形だけでも良いので続けることが大切です。
2. 言葉の意味を分かりやすく説明する
子どもの理解力に合わせて、簡単な言葉で意味を伝えます。 * 「いただきます」:「このお魚さんも、お野菜さんも、ごはんも、命を『いただきます』っていうんだよ」「おいしいごはんを作ってくれたお母さん(お父さん)にもありがとう、っていう気持ちだよ」など、具体的に誰や何に感謝するのかを伝えます。 * 「ごちそうさまでした」:「おいしいごはんをごちそうしてくれてありがとう、っていうんだよ」「食べ終わったお皿を片付けてくれる人にもありがとう、っていう気持ちだよ」などと説明します。
絵本や歌など、子ども向けの教材を活用するのも有効です。
3. 具体的な体験と結びつける
食べ物がどのようにできているかを知る体験は、感謝の気持ちを育むのに役立ちます。 * スーパーで野菜の産地を見て話す。 * 魚屋さんで魚の姿を見る。 * 簡単な家庭菜園で野菜を育てる。 * 一緒に料理をする中で、食材に触れる。 * 難しい場合は、食べ物の生産過程を紹介する絵本や動画を見るだけでも学びになります。
4. 食事の場を大切にする
食事の場をできるだけ落ち着いた雰囲気にするよう心がけます。慌ただしい中で形式的に挨拶をするだけでなく、少し立ち止まって食べ物や作ってくれた人に意識を向ける時間を持つことが理想です。家族みんなで挨拶をすることで、習慣として定着しやすくなります。
これらの取り組みは、特別な時間を設ける必要はありません。日々の食事の中で、少し意識を変えることから始めることができます。完璧を目指すのではなく、できることから少しずつ取り入れる姿勢が大切です。
日々の「いただきます」「ごちそうさまでした」の挨拶は、子どもが食べ物や命、そして関わる人々への感謝の気持ちを育むための、小さくても大きな一歩となります。忙しい毎日の中でも、食卓での短い時間が子どもたちの心豊かな成長に繋がることを願っています。